あしなが育英会 石巻レインボーハウス

2011年、2012年、2013年のはじまりの日の売り上げや寄付金はあしなが育英会に支援されています。
(内訳についてはこちらをご覧下さい → 
2013年の支援金は、東北の子どもたちをサポートする拠点である、
東北レインボーハウス建設や運営に使われています。
この夏、3カ所の東日本レインボーハウスを訪ね、担当者の方々に被災地の現状などを伺いました。
そのレポートを3回に分けてお送りしています。今日は2回目・・・


データ)あしなが育英会 石巻レインボーハウス
    宮城県石巻市中里2丁目2番地3
    竣工:2014年3月25日
   
お話を伺った方)あしなが育英会 東北事務所 石巻担当 今井さん 佐藤さん


JR石巻駅から北に歩いて15分ほど石巻バイパスに面した所に
石巻レインボーハウスはあります。
建物は、以前は百貨店の小型店舗だった建物のリニューアル工事を行い、
その北側へ多目的ホールなどを増築して
既存と増築で一体的な運用ができるように通路で接続したものです。


東北のために

お話は石巻担当の今井さんと佐藤さんに伺いました。

「二人とも震災の時は大学生でした。
被災はしませんでしたが、当時はどうしていいか分からず、何もできませんでした。
その悔しい思いもあって、卒業後は何か東北の役に立ちたいと思い、
あしなが育英会に就職しました」
お二人とも2012年4月に大学卒業後あしなが育英会に就職。

あしなが育英会では、「東北の子どもを癒すのは、東北の人がふさわしいのでは」
という考えで、東北在住の新卒者の採用を2011年には、決めていたとの事です。



吹き抜けの天井が開放的な元店舗部分。現在はラウンジとして使用。
ここで子どもたちを迎えに来た保護者同士が語らうなどくつろぐ
場所になっている。


ラウンジの階段下を利用して子どもたちが隠れるスペースに。
子どもたちの声を拾い作られた仕掛けが、随所に見られる。


普段忙しく働いている親御さんが、子どもたちを
待っている間に、体をほぐすマッサージチェア
仕事や狭い仮設住宅で疲れている体を、
ほぐして欲しいというスタッフの心配り。


子どもたちの時間によりそう

東北レインボーハウスでは、特別一時金の申請をした2000を超える子どもたちに
毎回、催されるプログラムの案内を配布しています。

石巻の担当世帯は305世帯。およそ400人弱の子どもたちが対象となっています。
開館日やイベントには、20人〜30人が参加しています。
この人数を聞いて、「以外と少ない」と思われた方もいるかもしれません。
しかしそれは、「私たちの感覚」なのかもしれません。


多目的ホールにはマットが敷かれ、小さい子ども
たちも安心して走り回れる。
学校の校庭には被災した他の学校の仮設校舎が、
公園は仮設住宅が建ち、子どもたちが安全に
思いっきり大きな声を出して走り回れる場所は
市内に少ない。


「案内を出して子どもが参加したいと思っても、
交通機関も少なく、子どもだけで来れる距離ではありません。
どうしても、親御さんの車での送り迎えが必要になってきます。
みなさん一人で子どもを育てていますから、仕事先の休みが合わなかったら
参加させたくても送迎ができないのです。
また子どもも、いつも一人でがんばっている親御さんを見ていますから、
無理を言えないと我慢してしまう子もいます」

「気持ちや生活状況の個人差もあると思います。
震災直後から来ていた子が、新しい場所で生活するようになって来なくなったり、
参加するのにためらいのあった子が、気持ちが落ち着いて参加してくれるようになったりと
子どもたちの抱えている事情も様々です」

仙台レインボーハウスの三宅さんもお話されていた、
心や生活環境に個人差が出て来て、より複雑化している状況があるようです。


レインボーハウスに共通の「おしゃべりの部屋」
ぬいぐるみを抱きしめながらお話をする部屋・・・と思いきや
真ん中にぬいぐるみを集めてダイブしたりする事もあるそう。
各部屋の使い方はこどもたちにゆだねられている。

「子どもたちにとって、レインボーハウスが家や家族のようであればと思います。
いつでもそこにあって、子どもたちを受け入れたり、送り出したり・・・」

結果や成果をすぐに求めず、子どもたちの時間に合わせたり、待ち続けたりと、
その、子どもたちによりそう姿勢の大切さを、お二人の話しから教わった気がします。

私たちも早い回復を望むのではなく、被災地の子どもたちに合わせ、
ゆっくりと待つ心が必要なのだと思いました。


ファシリテーター不足

お二人に、今、困っていることは、と伺いうと、

ファシリテーター不足ですね」と即答。

「今まで、東北でファシリテーター養成講座を受講した人が320人います。
しかし、実際にファシリテーターとして活動しているのは2割〜3割の60人〜90人くらいです。
みなさん東北の方々なので、震災の影響を仕事でも生活でも受けていていますから
仕事が忙しくなったり、家庭の事情で参加出来ない人も多いのです」

「自分は直接被災していなくても、親戚のお子さんが震災で亡くなっている方もいて
子どもたちと接すると、思い出してしまうので、辛いという方もいました」

「東北のスタッフは10人です。ファシリテーターさんがいなくては、
子どもたちへのイベントやプログラムも成り立ち難くなります。
東北は広いので、ファシリテーターさんに来ていただくのにも時間がかかります。
ファシリテーターとして参加出来る方が固定化すると
負担が重くなるので、なるべく多くの人に参加してほしいですね」

あしなが育英会では、東京と神戸でファシリテータ養成講座を開催。
受講して無理のない範囲でプログラムのお手伝いをすることも不可能な事ではありません。

東北以外の人がファシリテーターとして参加して子どもたちに
違和感がないのか伺ったところ
「逆に、地域に全く関係のない人の方が話しやすい、という子もいます」

東北から遠く離れた大阪ですが、探せば、まだまだ出来る事はあるのかもしれません。

最後にお二人に伝えたい事はありますかと伺いました。

「マスコミなどで 「〜年経ちました」と報道されますが、
被災地では、「震災から時が止まった」と感じている人がたくさんいます。
そう感じているのに、時間の経過とともに状況はどんどん複雑化している・・・それが現状です」

被災地の視点で考える、思う。
私たちが心に留めておかなければいけない、大切な事だと感じました。


屋上には人工芝が敷かれ、水遊びも出来る。
ここからは、地域の風物詩で毎年8月1日に行われる「石巻川開き祭り」
の打ち上げ花火も見られる。


はじまりの日実行委員 上山智春