あしなが育英会 仙台レインボーハウス

2011年、2012年、2013年のはじまりの日の売り上げや寄付金はあしなが育英会に支援されています。
(内訳についてはこちらをご覧下さい → 
2013年の支援金は、東北の子どもたちをサポートする拠点である、
東北レインボーハウス建設や運営に使われています。
この夏、3カ所の東日本レインボーハウスを訪ね、担当者の方々に被災地の現状などを伺いました。
そのレポートを3回に分けてお送ります。


データ)あしなが育英会 仙台レインボーハウス
    宮城県仙台市青葉区五橋二丁目1-15
    竣工:2014年3月1日
お話を伺った方)あしなが育英会 東北事務所 三宅さん


建物左側が増築した多目的ホール
右側は既存建物を改修し食堂や宿泊施設、事務室として使用。


東北レインボーハウスの拠点でもある仙台レインボーハウスは、
仙台市営地下鉄五橋駅近く、JR仙台駅からも徒歩15分くらいのところにあります。
元々は病院、そして専門学校の校舎だった既存の建物に多目的ホールを増築して完成しました。



天井がユニークな形をした多目的ホール


東北レインボーハウスに共通する施設は、子どもたちが自由に走り回れる多目的ホール
大きなホワイトボードがある遊びの部屋、円形の部屋にたくさんのぬいぐるみが置いてあるおしゃべりの部屋、
感情を発散させる火山の部屋があります。
また、プログラムに集まった子どもや保護者の方が
ファシリテーターさんやスタッフの方と一緒に食事をしたりおやつを食べたりする、
団らんのためのスペースとして家庭的な家具が配置された食堂があり、
宿泊プログラムのための和室があります。



火山の部屋


今回は、あしなが育英会 東北事務所 三宅さんからお話を伺いました。
三宅さんは岡山県出身で大学卒業後、企業に就職。
その後あしなが育英会に入り、神戸レインボーハウスの運営にも携わってこられました。

あしなが育英会東日本大震災での活動

あしなが育英会では東日本大震災の発生した二日後の3月13日には、
緊急対応会議を開き緊急対応措置を決め、その後すぐ現地に職員を派遣し活動を開始。
4月11日には「あしなが育英会東北事務所」を仙台市に開設し、遺児学生と職員の方々が
被災地の奨学生と奨学金支援者の安否確認を実施。
また、返済不要の「特別一時金」の情報などを伝えるために被災地を回る活動を始めています。

震災の二日後といえば、メディアから流される映像にただただ呆然とし、
何が起きているのかも理解出来ない人も多かったと思います。
そんな中で、異例とも言える早さで決断し行動に移せたのは、
長年の活動の蓄積と阪神淡路大震災での経験があってのことだと思います。
三宅さんも「あしなが育英会は、国からの助成金補助金を受けていないので、
監督官庁への申請や承認を受けずに緊急時には独自に判断し行動出来るのが利点ですね」とおしゃっていました。


レインボーハウスの家具は、明るい色が選ばれている


震災直後はまず現地に入り、調査をしたそうですが、その際、震災前に仙台で立ち上がっていた
NPO法人子どもグリーフサポートステーション(注1)があしなが育英会の活動を支援してくれました。

この団体は、大切な人や場所などを喪失した人をサポートする団体で、
あしなが育英会の「親を亡くした遺児への支援」とも重なります。
仙台に仮設事務所を開設後、子どもたちのone dayプログラムを開催したりと
地元に土地勘のある団体と一緒に活動を始めた事は何かと助けになっているとの事でした。

あしなが育英会では、子どもたちへのサポートだけではなく
子どもたちをサポートしてくれるファシリテーターの育成にも力を入れています。
ファシリテータとは遺児によりそい、遊びやおしゃべりなどを通して
「心のケア」をお手伝いするボランティアの事で、
ファシリテータ養成講座を受講し終了した人がファシリテーターとしてボランティアに参加しています。
養成講座は仙台市盛岡市で開催され、東北で約320人ほどが受講を終了しています。



施設内は子どもたちが家に帰ったような、包まれた感じになるよう
に木を使ったあたたかい意匠が施されている


震災から3年経って

三宅さんに、いま何か問題になっている事はありますかと伺ってみました。
「震災から3年経ちましたが、心の状態が個人によって違いが出て来ており、複雑化しています。
よりきめ細やかな対応が必要だなと実感しています」

阪神淡路大震災と違い、被害が広域であること、
福島第一原子力発電所の事故もあり、津波被害だけではないことなどからもサポートの難しさが伺えます。



三宅さんからお話を伺った食堂。
わかり難いが椅子の座面の生地がところどころ赤や緑などの
色が使われて、均一な感じにならないように配慮されている


東北の地図を広げてお話を伺っている時に三宅さんが
「見て下さい、岩手県て四国がすっぽり入ってしまう大きさなんですよ」

東北の方々の「隣町に行く、隣の県に行く」という感覚が
大阪に住む私たちが、他府県の神戸や京都に行くのとは感覚が違うということ。
都市部に生活している人がまず、被災地に対して合わせなければいけないのは、
自分たちの感覚で「ものを語らない」事なのかもしれません。
ちなみに「仙台から陸前高田まで、新幹線を使っても移動に半日かかる」そうです。

最後に三宅さんに、「何か伝えたい事」はありますかと伺いました。

「被災地の事を忘れないでいてほしいと思います。
少しでも、年に一度でもいいから思い返して、忘れないでほしいと思います」

はじまりの日は、年に1度、たった1日ですが、
東北の方々のことを思い返すきっかけになる、そういういう大切な1日であってほしいと思います。



仙台レインッボーハウスの入り口のサイン


注1)グリーフとは大切な人をなくしたり、自尊心や自身の尊厳に関わるものを喪失したときに
ともなう感情ことを言い、この感情をサポートする事を日本ではグリーフケア(Greif care)、
英語ではビリーブメントサポート(Bereavement support)と言います。


はじまりの日実行委員 上山智春